(李花さん起きないな。)
雪月は李花の瘤に当てていた布がぬるくなっていたので、再び水で冷やしていた。
外では相変わらず雷が鳴っており、雨の音が次第に近くなっている。これからどうしようなどと考えていると、切迫した様子の颪が帰ってきた。全身びしょ濡れである。
「颪さん⁉︎ 大丈夫ですか?」
「あなたはここに隠れていてください。」
「どういうことですか? 何があったんです?」
「最悪の状況になっています。」
「え…」
それは二人が争っているということだろう。すると近づいてきていた雷雨が、ついに雪月たちのいる洞窟を覆い始めた。
「もう少し奥へ。ここにいると危険です。」
「ですが二人は…。」
「…こうなったらどうしようもありません。」
「そんな…」
どうにかする方法はないのかと外を見た瞬間、何かがもの凄い勢いで吹っ飛ばされていくのが見えた。それは暗闇を射抜くほどに光る赤い双眸に、血塗られたような角が生えた鬼、牙鋭だった。牙鋭は崩れた体勢を立て直し、再び物凄い速さで移動する。驚いて声も出ない雪月だったが、それよりも驚いたのは牙鋭が向かった先だった。
稲光に照らされた黒蓮の姿は、もう人のものではなかった。
額からは髪色と同じ黒漆の角が二本生え、右目は唐紅、左目は金色に輝いており、朱唇から覗く牙まで鋭く目立っている。鬼神本来の姿に戻った黒蓮のその瞳が捉えているのは、牙鋭だけだった。
雪月は李花の瘤に当てていた布がぬるくなっていたので、再び水で冷やしていた。
外では相変わらず雷が鳴っており、雨の音が次第に近くなっている。これからどうしようなどと考えていると、切迫した様子の颪が帰ってきた。全身びしょ濡れである。
「颪さん⁉︎ 大丈夫ですか?」
「あなたはここに隠れていてください。」
「どういうことですか? 何があったんです?」
「最悪の状況になっています。」
「え…」
それは二人が争っているということだろう。すると近づいてきていた雷雨が、ついに雪月たちのいる洞窟を覆い始めた。
「もう少し奥へ。ここにいると危険です。」
「ですが二人は…。」
「…こうなったらどうしようもありません。」
「そんな…」
どうにかする方法はないのかと外を見た瞬間、何かがもの凄い勢いで吹っ飛ばされていくのが見えた。それは暗闇を射抜くほどに光る赤い双眸に、血塗られたような角が生えた鬼、牙鋭だった。牙鋭は崩れた体勢を立て直し、再び物凄い速さで移動する。驚いて声も出ない雪月だったが、それよりも驚いたのは牙鋭が向かった先だった。
稲光に照らされた黒蓮の姿は、もう人のものではなかった。
額からは髪色と同じ黒漆の角が二本生え、右目は唐紅、左目は金色に輝いており、朱唇から覗く牙まで鋭く目立っている。鬼神本来の姿に戻った黒蓮のその瞳が捉えているのは、牙鋭だけだった。