「おい、そこのお前。」
「…なんでしょう?」
 上半身が人間、下半身が蜘蛛の妖怪とも神とも言えぬ、奇妙な男はゆっくりと長庚の方を向いた。
「最近、あの鬼神サマの屋敷の周りで何かこそこそやってるだろ。それに、力の弱い妖怪たちに手を出しているのもお前だ。」
「そうだとして、あなたに何の関係があるというのです?」
「大ありだ。お前みたいなよく分からねぇ奴に荒らされちゃ困るんだよ。何が目的だ?」
「さぁ。答える義理はありません。それに自分は屋敷には入れませんし。」
 立ち去ろうとする半人半蜘蛛の行く手を阻むように、長庚は立ちふさがる。
「行かせるかよ。」
 黄金色の瞳で睨みつけるが、相手は全く怯む様子を見せなかった。
「…そうですか。邪魔する者には容赦しなくて良いと言われています。」
「言われている? やっぱりお前は牙鋭の…って、ぐあっ…⁉︎」
 月明かりに赤い飛沫が輝いた。