「牙鋭様、ただいま戻りました。」
「おう、ご苦労だったな。…結果は?」
「はい。やはり結界が張っており、自分は入れませんでした。おそらく牙鋭様も同じかと…」
「そうか…。」
 しばらくの沈黙の後、牙鋭は不敵な笑みを浮かべた。
「それなら、その人間を外に連れ出せばいい。中に入れる妖怪を用意しろ。」
「御意。」

「…待っていろ、黒蓮。」
 月を見上げた双眸は、妖しい赤色に光っていた。