「はい。ありがとうございます。」
 確かに牙鋭という存在は心配だが、黒蓮といる限りは大丈夫だろうと雪月自身も感じていた。
「では僕はそろそろ行きますね。これ以上長居してもご迷惑になりそうですし。」
「お見送りします。」
 戸口に向かいながら、叢雲は二人に無邪気な笑顔を向けた。
「今度は診療のお礼じゃなくてお土産を持って遊びに来ますね。」
「本当ですか? 楽しみにしています。」
「ああ、もう風邪は引くなよ。」
「はは、気をつけます。それでは。」
 戸口を開け、強い風が吹いたかと思うとそこにはもう叢雲の姿はなかった。黒雲も共に消え、青空が広がっている。

「黒蓮様と叢雲くんは、昔から知り合いなんですか?」
「叢雲はああ見えて、とうに千歳を超えている。俺があいつに出会ったのも…七百年くらい前だな。」
「千…。」
 十数年しか生きていない雪月にはとても想像できなかった。
(叢雲〝くん″なんて失礼だったな…。)