雪月は理解するとともに驚いていた。この辺りの山を治めるとは人間たちのためでもあったのである。てっきり妖怪同士の争いなどを起こさせないようにしているだけかと思っていた雪月は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「黒蓮様は人間のためにも行動してくれていたのですね。」
「…人間でも妖怪でも、争いは起きないほうがいいからな。力を使わない分、他にできることを探しているつもりだ。」
 黒蓮の他者を思うその心は、どこから生まれたのだろう。過去を知らない雪月には、まだ分からぬことだった。