自宅に帰り夕食を済ませると、今度は親父に呼ばれた。

中学の教師をしながら、寺の住職もする親父。
穏やかだけど、真っ直ぐな人。

「進路は決めたのか?」
高3の俺にとっては当たり前の心配。
でも、目の前に大会のことしか考えられなくて、現実味がない。

「大学に行って教師になる。ゆくゆくは寺も継がないといけないし」
今まで何度も言ってきた話じゃないか。
何を今更と思いながら答えた。

俺は1人息子。
多くの檀家を抱えている以上、寺を継がないわけにはいかない。
そうなればサラリーマンは無理で、自営業か公務員くらいしか選択肢がない。
分かったことだろう。

「お前に、出来るのか?」
はあ?
ついムッとして、睨んでしまった。

俺は成績だってそこそこ良いし、人当たりだって悪くない。
小さい頃から親父について檀家さんの家を回っていたし、寺の仕事がどんなものかだってよくわかっている。
そんなこと、親父だって知っているはずだ。

「今のお前が、教師になれるのか?」
「どういう意味だよ」

「いつも本気にならないで生きているお前に、他人の人生を預かる事が出来るのか?」
「はあ?」
「表面だけで向かい合っても、子供にもその親にも伝わるんだぞ。今のお前がまともな教育者になるとはとても思えない」

ショックだった。
自分でも器用な人間だと自負がある。
一生懸命しなくても、そこそこ何でも出来てしまう器用貧乏。
何でも人並みに出来るくせに、何かに秀でることもない人間。
それを見透かされていたなんて・・・

「自分の将来について本気で考えなさい」
「父さん」
「家のことはどうにでもなるから心配するな。父さんだって、まだ20年や30年は頑張れる。いいな」
「はい」

もう、言い訳は出来ない。
俺は自分の意志で、将来を決めなくてはいけない。