10
マインは震える声で、自分が樹海の鳥の生け捕りに加担した経緯を白状した。
「たのまれたのよ、あの道具を手渡されてね。それで樹海の鳥を生け捕ってくるよう……あの男に……。商人ナーイと出会う前にね。でもあの商人が、樹海の鳥使いと親しいなんて知らなかった」
自分が樹海に鳥に生け捕りに加担したこと白状したマインを、カーネリアはさらに問い詰める。
「ナーイの手伝いをしながら、怪しい奴らの手伝いをしていたのね。そいつらから樹海の鳥使いには気を付けろって、言われたのでしょ!」
「それは樹海周辺部で小動物を狩っている猟師達に、彼方たちの鳥がぶっ壊した道具を手渡した時に言われたわ。私達はあの男からもらった道具を猟師に持たせて、今日の朝までに鳥を生け捕って来るよう頼んだのよ。猟師に頼めば、確実に鳥を生け捕って来るだろうと思ってね」
マインは震えた声でぼそぼそと話し始めた。
「なるほどね。さっきの男達はリエンと、ニジノオドリの雛を生け捕って来た猟師達だったのね。それより貴方達にこんなことを頼んだあの男って、何者?」
カーネリアはきつい口調でマインを問い詰めるが、マインはますます混乱していくばかりだ。
「知らないわ。自分の名前すら名乗らないのだから。首尾よく行けば、猟師が帰った後で、あの男に獲物を渡すはずだったのよ。それより彼方の鳥をなんとかして!」
マインは悲鳴に近い声で、泣き叫ぶ。ジェダイドが低空飛行を続け、マインをおびえさせている。ジェダイドは地上に何かを見つけらしい。地上すれすれのところを飛びながら、足先を草の中につっこみ、叢に隠れていた何者かを追い立てる。それは見た事も無い服装をして、ジェダイドが壊した道具を小さくしたものを持った男だった。生け捕りの鳥を、受け取りに来た男だろう。ジェダイドに追い立てられた男はジェダイトの攻撃を避けながらモリオンに飛びかかり、羽交い絞めにした。
「早くあの鳥をなんとかしろ。出ないとこいつをぶっ放すぞ」
人質にとられたモリオンを見たカーネリアはマインを取り押さえていた手を緩め、マインはカーネリアの手をすり抜けると走り去っていていった。上空を見上げるとジェダイドは、モリオンの頭上をぐるぐると旋回している。モリオンの危機を感じているのだ。
「さぁ、今度は鳥籠をこっちに渡してもらおうか」
ジェダイドが何もしないのを見ると、なおも男はモリオンに道具を押しつけながら、カーネリアに命令する。だが絶体絶命だと思われた時、いきなり助っ人が現れた。丈の長い、黒いマントを着た人物か突然、モリオンを羽交い絞めにしている男に飛びかかり、打ちのめしたのだ。軽食屋で見掛けた人物だ。男から解放されたモリオンはカーネリアの元に走り寄り、二人で助っ人の様子を見詰めた。助っ人は仰向けに倒れた男の手から道具を奪うと、丘の上から湖にむかって投げ捨てた。その時、目深に被っていたマントのフードかずれ落ちて、助っ人の顔があらわになった。
「ジェイド! 何故此処に?」
驚くしかない。カーネリア達を助けた助っ人は……ジェイドだった。
「こいつを追って樹海から町へ来たんだ。軽食屋で君達と会った時は、びっくりしたよ。それよりこいつが起きないうちに、ここを離れたほうがいい」
自分が打ちのめした男を指さしながら、ジェイドはカーネリアに忠告する。
「この男ね、鳥の生け捕りを頼んだのは」
カーネリアは、倒れている男の顔をのぞき込む。やけに色の白い男だ。
「こいつはほっておけ、それより早く野営地に戻ったほうがいい」
ジェイドにうながされ、モリオンとカーネリアはジェイドと共に野営地へと引き返し始めた。頭上ではジェダイドといつの間にか姿を現した、爪の先に籠を引っ掛けたブルージョンがモリオン達の先を飛んでいる。三人は無言で、野営地に向かって歩き出するしところが野営地に着く前に、もう一人男が姿を現し、ジェイドはその男も打ちのめした。商人の恰好をした、見知らぬ男だ。
「何故か知らないが、樹海をうろついていたやつだ。おそらく、何かを企んでいるのだろう。さあ、早く」
三人は倒れた商人を置いて背の高い草の中を進み、天幕を張っていた場所にたどり着く。ベヌゥ達はすでに野営地上空で、旋回しながらモリオン達を待っていた。
「ブルージョン、ジェダイド」
カーネリアが呼ぶと、二羽のベヌゥはゆっくりと降り、ジェダイドは地面に蹲った。そして高い空にいたブルージョンの方は、人間の背の高さくらいまで降り、カーネリアが足の爪に引っかけている籠を受け取ると、ジェダイドの隣に蹲った。ブルージョンから籠を受け取ったカーネリアは、籠を地面に置くと籠の入り口の留め金を外し、雛を自由にする。籠から出てきた雛は、少し震えてはいるが元気なようだ。しかしいきなり空高く上昇させられたのが負担だったらしく。自由になっても、蹲ったまま震えている。
「さあ、もう大丈夫だよ」
ジェイドは雛に声を掛けながらマントと上着を脱ぎ、袖無しの下着だけになると上着を雛に被せ、再びマントを羽織ると上着にくるまれた雛を抱き上げる。その時あらわになったジェイドの右肩から右腕の殆どは、やけどに覆われていた。上着を脱ぐときに下着もめくれ上がって見えた背中にも、火傷の跡が見える。火傷をしていないのは顔と鳥使いの印のある左の肩と腕だけのようだ。ジェイドは卵泥棒を追っていて、恐ろしい体験をしたようだ。しかしカーネリアもモリオンも、火傷については、ジェイドには聞かずにいた。ジェイドが、恐ろしい体験を思い出さないように。
「この雛をどうするの?」
ニジノオ鳥の雛を抱いたジェイドに、カーネリアが質問する。
「暫く面倒を見た後で、樹海に戻してやるつもりだ」
ジェイドの言葉からカーネリアは、今のジェイドは樹海で暮らしているのだと確信した。樹海で暮らしてないと、樹海の鳥の面倒を見て放つなど出来ないだろうから。
「もしかして、今は樹海周辺部に住んでいるんじゃない?」
「あぁ、時には町に出て来るけれどね」
やはりジェイドは、樹海周辺部で暮らしていた。でも何故、ジェイドはひどい火傷を負いながら樹海で暗く事になったのだろうか? どうしても知りたくなったカーネリアは、ジェイドが答えたくないのを心で感じながら、ジェイドに質問を浴びせた。
「今まで何をしていたの? どうして姿を隠していたの? ネフライドは?」
「わからない……。気が付いたら一人で樹海にいたんだ」
カーネリアに堰かされて、ジェイドはなんとか話をする気になったらしい。時々言葉に詰まりながらも、卵泥棒を追いかけた時に何を体験し、何故樹海に住むようになったのかを、話てくれた。
「丘の上に現れた奇妙な空飛ぶ乗り物を追って、樹海周辺部を西へと飛んで行って、沈黙の山まで来たところで炎に巻き込まれたのは覚えているよ。でも、それから後の記憶が一つも無いんだ。大怪我をしたはずなのに、どうして助かったのかもわからない……。次に覚えているのは、樹海に一人でいて、もうネフライドには乗れないのが解かったことだよ。だから樹海周辺部で暮らす事にしたのさ。もう鳥使いの村には帰れないから。ところが樹海周辺部には、樹海の生き物を生け捕ろうとするやつらがいたんだ」
樹海に住むようになった理由を話し終えると、ジェイドは言葉に詰まって再び黙ってしまう。もうこれ以上、ジェイドに色々と聞くのは無理だろう。カーネリアが質問するのを止めると、今度はモリオンがジェイドに話しかける。
「わかった、ジェイド。これ以上何も聞かない。あなたが樹海を守ろうとしているのが解っただけで、本当によかった。それより私、鳥使いになったのよ」
モリオンはジェイドに優しく話しかけたが、ジェイドの答えは以外なものだった。
「君が鳥使いになったのは、もう知っているよ。樹海でベヌゥに乗る君をよく見かけたからね」
なんと、ジェイトは鳥使いになったモリオンとジェダイドを見ていたのだ。
「君もう立派な新入りの鳥使いだよ。鳥使いの道を歩むには、沢山困難があるだろうけれど、君なら乗り越えられる……きっとね」
ジェイドは、ニジノオ鳥の雛を抱きしめたままモリオンに語り掛け、途中からモリオンに近寄ると、雛を右手に抱き抱え直してから、左手をモリオンの左肩に置き、モリオンを見詰める。
「君が一人前の鳥使いになるのを、楽しみしているよ。じぁ、さよなら」
ジェイドは別れの挨拶をしてモリオンから離れると、ニジノオ鳥の雛と共に森へと走っていく。
「待って、ジェイド。お願い、村に……深緑に帰って」
姿を消そうとするジェイドをカーネリアが呼び止め、ジェイドは一瞬立ち止まりって、カーネリアにせを向けたままカーネリアの呼びかけに答えた。
「ごめんよ、カーネリア。村にはもう戻れないよ。ベヌゥの近くには、いたくないんだ。さよなら」
この言葉を最後にジェイドは森へ突き進み、姿を消していく。その様子をカーネリアは、涙が溢れる目で見守った。ジェイドは身体の傷よりも重い心の傷が治るまで、鳥使いの村には戻らないだろう。今カーネリアがしてあげられるのは、樹海に消えるジェイドを見守る事だけ。そう思うと、涙がいくらでも溢れて来る。でも、泣いてばかりもいられない。
「さあ、もう行きましょう」
カーネリアはモリオンを促すと騎乗具を手にし、ブルージョンに近付いていく。
鳥使い達が去った後で、男はゆっくりと頭を上げた。
「やれやれ、なんと言うやつだ。何も知らないで……」
呟きながら起き上がった男は立ち上がると後、周囲を見回し、母語で呟いたのを誰かに聞かれてなかったかを確かめる。彼らの知らない言葉を使うのを、絶対に地元民に知られてはならない。自分達の存在は、この世界では秘密なのだ。
「まったく……因果な仕事だよ。惑星探査員という仕事は……」
その男、惑星探査員ロウリー・ジマーは苦々しげに一人呟く。自分達の存在を知られても良いとされる時まで惑星探査員は、この世界では正体を隠すことを求められる。正体を隠してこの世界の調査をし、それと同時にこの世界への不法侵入を阻止しなければならないのだ。なにしろこの世界は、宇宙船で遭難した人々の子孫であろう人類か、独特の社会を営んでいる世界だ。そのためにこの世界は、特別な保護下にある。惑星探査員ロウリー・ジマーは、この世界を保護する為に、此処にいるのだ。
「それなのに、こいつらの仲間と間違えるとはなぁ」
ロウリーは丈の低い草の上を歩いていて、倒れている不法侵入者に近付く。ここ数日間、ロウリーが追っていた不法侵入者だ。今は哀れにも、大きな鳥に乗っていた男に打ちのめされている。この世界の生物や資源を目的に、不法侵入してきたやからだ。こいつのおかげでロウリーまでも不法侵入者の仲間と間違われ、あの鳥使いの男にぶん殴られてしまった。別の不法侵入者が起こしたひどい事故からたった一人、助け出して治療したというのに。あの男を治療した後、秘密保護の為にロウリー達の記憶を抜いておいたのだから、助けたことなど忘れているのだろうが。それにいくら殴られても身体の殆どを人工物に代えてしまった身では、気絶することは無い。怪しまれないように、気絶した振りをしていたのだ。
「こんな服装で地元民の前に現れるなんて、無用心にも程がある。おまけに、動物の生け捕り武器を地元民に渡すとは……。一度自分達で巨大な鳥の卵を盗み損なってから、この惑星の人間を自分達の悪さに加担させようとしたのだろう。もってのほかだ」
ぶつぶつ言いながらロウリーは、ズボンのホケットから拘束具を取り出し、さらに超小型注射器で鎮静剤を注射する。こいつを捕まえる為に町でひそかに活動し、自分が助けた男に殴られるのも我慢したのだ。不法侵入者に注射をし終わると、ロウリーは袖をまくって腕輪型の通信機器で仲間と連絡し、拘束した不法侵入者の情報を送ると仲間が来るのを待った。
フォルサの町での商売を終え、知識の塔のある中州に帰って来たカーネリアとモリオンは、さっそくモリオンの引っ越しの準備を始めた。初めての商売の旅をやりこなした事で、モリオンが正式に新入り鳥使いとなるのは確実になったのだ。そのためモリオンは今まで使っていた家を掃除し、村にもっていく物をベヌゥの騎乗具に付いている物入れに入れ、鳥塚いの村に行く準備をし始めた。さらに中州に連れて来た庭の家禽のうち雌の一羽を、中州に立ち寄った鳥使い達に頼んで怪我をした動物を運ぶ要領で鳥使いの村まで運んでもらい、雄の一羽は樹海にとイナの村とを行き来する力があると判断したので、樹海に放した。
こんな引っ越し準備の間にも、カーネリアとモリオンは、ジェイドの意識を接触しようと試みた。しかしジェイドの意識が感じられたのは一度だけ、生け捕りにされていたニジノオ鳥の雛の様子や、リエンやマインを始めとする、ニジノオ鳥の生け捕りに関わった人間達が、フォルサの町の役人に捕まった事を伝えて来た時だけだ。よし知らせだ。ただし、奇妙な服を来た男と、ジェイドが最後に打ちのめした商人はどこか姿を消してしまった。よい知らせを伝えながらも、意識の中にすら現れないジェイドにもどかしい思いを抱きながら、カーネリアは引っ越しの準備を進め、、鳥使いの村からやってくる、長老を含めた数人の鳥使い達を待った。
モリオンが新入り鳥使いとして鳥使いの村に入る事はほとんどきまっていたのだが、村になかには、モリオンが鳥使いになるのを快く思っていない人々もいた。そんなな人達を最終的に納得させるために、鳥塚いの村から鳥使い達が知識の塔にやってきて、モリリオンの鳥使いとしての技量を試すことになっていた。。彼らがモリオンの技量を測り、新入り鳥塚い説いてやっていけるだけの技量があるとと判断すれば、モリオンは誰にも邪魔されずに、鳥使いの村の一員になれるのだ。
やがて鳥使いの村から五人の鳥使いがやって来て、さっそくモリオンの技量を測り始める。モリオンが樹海の木になった果実を採ったり、巨樹の幹を這う小動物の中で群れからはぐれた個体を生け捕り、仲間の群れに還したりするのを見守る鳥使いの中には、嬉しい事にカーネリアの恋人、クロッシュもいた。カーネリアは鳥使い達がモリオンの技量を図り終わり、知識の塔での修行が無事終了したと判断するのを待つ少しの時間を、クロッシユと二人だけの時間にした。
他の鳥使い達が中州に建てられた家の中で休んでいる夜に、カーネリアとクロッシュは中州を取り囲む崖の上に行き、二人だけの時を過ごした。二人が座って寄り添い合っている崖の上は、モリオンとジェダイドが初めて空に飛び出した場所だ。薄暗い夜空には、惑星ビティスだけが姿を現し、鳥使いの恋人たちを見守っている。
「ごめんなさいね。長い間、一人にさせてしまって」
崖の下に広がる、夜の樹海の景色を見ながら、カーネリアはクロッシュに長らく一人にしておいた事を詫びた。
「気にすんなよ。ただしちゃんと一人で待っていた俺を、褒めてくれよな」
「はいはい、あなたは最高の恋人よ。お礼に村へ帰ったらあなたを伴侶にして、嫌になるくらい一緒にいてあげるわ」
カーネリアとクロッシュは久々に心起きなく話し合い、笑い合う。しかし話題がジェイドの話しになると、カーネリアもクロッシユも、顔を曇らせた。
「やはりジェイドは、樹海周辺部をさ迷っていたのか」
クロッシュは悲しそうに言うと、大きくため息をつく。クロッシユにとってもジェイドは、大切な幼馴染なのだ。
「ひどい火傷を負ったうえに、パートナーを亡くした心の傷を背負って、どうやって樹海で生きていくんだろう」
クロッシュが地面に寝ころび、空を見上げながら呟いた時、同じように地面に寝ころんだカーネリアの意識に、ニジノオ鳥の雛を抱いたジェイドの姿が意識に浮かんだ。意識に現れたジェイドは、元気になった雛を自由にすると、ゆっくりと消えていく。
クロッシュも同じ光景を見ていたのだろう。二人同時に驚いて上半身を起こし、お互いを見つめ合った。
「あれは、ジェイドよね」
「あぁ」
二人同時にジェイドの姿が意識に現れたのを確認すると、カーネリアもクロッシュも、暫く黙って空を見上げ、ジェイドが自分の姿と共に伝えて来た事を思い返した。ジェイドは、自分はこれから樹海の中で、樹海の生き物達と共に生き、傷ついたり弱ったりした生き物を治療するのだと伝えていた。樹海の動物を治療することで、自分の身体と心の傷を癒す決意を、ジェイドはしていた。クロッシュとカーネリアは、お互い顔を見合わせながら、ジェイドの決意をしっかりと受け取る。
「さぁ、もう寝ましょう。明日は鳥使いの村へ飛び立つのだから」
意識を身元に戻したカーネリアは、大きな伸びをしながらクロッシユに離しかける。
「そうだね。でもその前に……これは新しい鳥使いを見事に育てた、君へのご褒美だよ」
クロッシユは優しい言葉と共にカーネリアを抱きしめ、そっと口付けをする。
モリオンが新入り鳥使いとしてやっていける技量があると判断されたのは、その次の日の事だった。
光の川の中州から鳥使いの村までの旅は、順調に進んでいった。ベヌゥ達に乗って樹海周辺部を抜け、鳥使いの村がある新緑に入ると、樹海周辺部とは違った景色が広がって来る。新緑の巨樹は、樹海周辺部の木など比べ物にならないくらい大きく、地面は巨樹の枝や巨樹の下を覆っている植物群に隠されて見えなくなり、巨樹の大きな枝や幹には、さまざまな生き物を生息させていた。カーネリア達は時々巨樹の枝にベヌウ達を止まらせると、初めて新緑にやって来たモリオンに、新緑の巨樹やそこに生きる生き物達の話しを詳しく話し、教えていく。
「これからはこの新緑が、貴方の住む場所になるのよ」
カーネリアの話しを、モリオンは目を輝かせて聞く。鳥使いの村は、もうすぐだ。カーネリア達は巨樹の枝からベヌゥ達を飛ばすと、一気に鳥使いの村へと向かっていく。やがて夕日の中に鳥使いの村がある、巨大な切り株のような形をしたが見えて来る。平らな山の頂上に建てられた村人の家々や、新入りや若手の鳥使い達の為の宿舎、山の中腹に作られたベヌゥの離着陸場が鳥使いの村の風景だ。夕日に包まれた鳥使いの村の上空を、沢山の鳥使いを乗せたベヌゥ達が飛び回り、新しい鳥使いとその指導者を歓迎していた 。
---了---
マインは震える声で、自分が樹海の鳥の生け捕りに加担した経緯を白状した。
「たのまれたのよ、あの道具を手渡されてね。それで樹海の鳥を生け捕ってくるよう……あの男に……。商人ナーイと出会う前にね。でもあの商人が、樹海の鳥使いと親しいなんて知らなかった」
自分が樹海に鳥に生け捕りに加担したこと白状したマインを、カーネリアはさらに問い詰める。
「ナーイの手伝いをしながら、怪しい奴らの手伝いをしていたのね。そいつらから樹海の鳥使いには気を付けろって、言われたのでしょ!」
「それは樹海周辺部で小動物を狩っている猟師達に、彼方たちの鳥がぶっ壊した道具を手渡した時に言われたわ。私達はあの男からもらった道具を猟師に持たせて、今日の朝までに鳥を生け捕って来るよう頼んだのよ。猟師に頼めば、確実に鳥を生け捕って来るだろうと思ってね」
マインは震えた声でぼそぼそと話し始めた。
「なるほどね。さっきの男達はリエンと、ニジノオドリの雛を生け捕って来た猟師達だったのね。それより貴方達にこんなことを頼んだあの男って、何者?」
カーネリアはきつい口調でマインを問い詰めるが、マインはますます混乱していくばかりだ。
「知らないわ。自分の名前すら名乗らないのだから。首尾よく行けば、猟師が帰った後で、あの男に獲物を渡すはずだったのよ。それより彼方の鳥をなんとかして!」
マインは悲鳴に近い声で、泣き叫ぶ。ジェダイドが低空飛行を続け、マインをおびえさせている。ジェダイドは地上に何かを見つけらしい。地上すれすれのところを飛びながら、足先を草の中につっこみ、叢に隠れていた何者かを追い立てる。それは見た事も無い服装をして、ジェダイドが壊した道具を小さくしたものを持った男だった。生け捕りの鳥を、受け取りに来た男だろう。ジェダイドに追い立てられた男はジェダイトの攻撃を避けながらモリオンに飛びかかり、羽交い絞めにした。
「早くあの鳥をなんとかしろ。出ないとこいつをぶっ放すぞ」
人質にとられたモリオンを見たカーネリアはマインを取り押さえていた手を緩め、マインはカーネリアの手をすり抜けると走り去っていていった。上空を見上げるとジェダイドは、モリオンの頭上をぐるぐると旋回している。モリオンの危機を感じているのだ。
「さぁ、今度は鳥籠をこっちに渡してもらおうか」
ジェダイドが何もしないのを見ると、なおも男はモリオンに道具を押しつけながら、カーネリアに命令する。だが絶体絶命だと思われた時、いきなり助っ人が現れた。丈の長い、黒いマントを着た人物か突然、モリオンを羽交い絞めにしている男に飛びかかり、打ちのめしたのだ。軽食屋で見掛けた人物だ。男から解放されたモリオンはカーネリアの元に走り寄り、二人で助っ人の様子を見詰めた。助っ人は仰向けに倒れた男の手から道具を奪うと、丘の上から湖にむかって投げ捨てた。その時、目深に被っていたマントのフードかずれ落ちて、助っ人の顔があらわになった。
「ジェイド! 何故此処に?」
驚くしかない。カーネリア達を助けた助っ人は……ジェイドだった。
「こいつを追って樹海から町へ来たんだ。軽食屋で君達と会った時は、びっくりしたよ。それよりこいつが起きないうちに、ここを離れたほうがいい」
自分が打ちのめした男を指さしながら、ジェイドはカーネリアに忠告する。
「この男ね、鳥の生け捕りを頼んだのは」
カーネリアは、倒れている男の顔をのぞき込む。やけに色の白い男だ。
「こいつはほっておけ、それより早く野営地に戻ったほうがいい」
ジェイドにうながされ、モリオンとカーネリアはジェイドと共に野営地へと引き返し始めた。頭上ではジェダイドといつの間にか姿を現した、爪の先に籠を引っ掛けたブルージョンがモリオン達の先を飛んでいる。三人は無言で、野営地に向かって歩き出するしところが野営地に着く前に、もう一人男が姿を現し、ジェイドはその男も打ちのめした。商人の恰好をした、見知らぬ男だ。
「何故か知らないが、樹海をうろついていたやつだ。おそらく、何かを企んでいるのだろう。さあ、早く」
三人は倒れた商人を置いて背の高い草の中を進み、天幕を張っていた場所にたどり着く。ベヌゥ達はすでに野営地上空で、旋回しながらモリオン達を待っていた。
「ブルージョン、ジェダイド」
カーネリアが呼ぶと、二羽のベヌゥはゆっくりと降り、ジェダイドは地面に蹲った。そして高い空にいたブルージョンの方は、人間の背の高さくらいまで降り、カーネリアが足の爪に引っかけている籠を受け取ると、ジェダイドの隣に蹲った。ブルージョンから籠を受け取ったカーネリアは、籠を地面に置くと籠の入り口の留め金を外し、雛を自由にする。籠から出てきた雛は、少し震えてはいるが元気なようだ。しかしいきなり空高く上昇させられたのが負担だったらしく。自由になっても、蹲ったまま震えている。
「さあ、もう大丈夫だよ」
ジェイドは雛に声を掛けながらマントと上着を脱ぎ、袖無しの下着だけになると上着を雛に被せ、再びマントを羽織ると上着にくるまれた雛を抱き上げる。その時あらわになったジェイドの右肩から右腕の殆どは、やけどに覆われていた。上着を脱ぐときに下着もめくれ上がって見えた背中にも、火傷の跡が見える。火傷をしていないのは顔と鳥使いの印のある左の肩と腕だけのようだ。ジェイドは卵泥棒を追っていて、恐ろしい体験をしたようだ。しかしカーネリアもモリオンも、火傷については、ジェイドには聞かずにいた。ジェイドが、恐ろしい体験を思い出さないように。
「この雛をどうするの?」
ニジノオ鳥の雛を抱いたジェイドに、カーネリアが質問する。
「暫く面倒を見た後で、樹海に戻してやるつもりだ」
ジェイドの言葉からカーネリアは、今のジェイドは樹海で暮らしているのだと確信した。樹海で暮らしてないと、樹海の鳥の面倒を見て放つなど出来ないだろうから。
「もしかして、今は樹海周辺部に住んでいるんじゃない?」
「あぁ、時には町に出て来るけれどね」
やはりジェイドは、樹海周辺部で暮らしていた。でも何故、ジェイドはひどい火傷を負いながら樹海で暗く事になったのだろうか? どうしても知りたくなったカーネリアは、ジェイドが答えたくないのを心で感じながら、ジェイドに質問を浴びせた。
「今まで何をしていたの? どうして姿を隠していたの? ネフライドは?」
「わからない……。気が付いたら一人で樹海にいたんだ」
カーネリアに堰かされて、ジェイドはなんとか話をする気になったらしい。時々言葉に詰まりながらも、卵泥棒を追いかけた時に何を体験し、何故樹海に住むようになったのかを、話てくれた。
「丘の上に現れた奇妙な空飛ぶ乗り物を追って、樹海周辺部を西へと飛んで行って、沈黙の山まで来たところで炎に巻き込まれたのは覚えているよ。でも、それから後の記憶が一つも無いんだ。大怪我をしたはずなのに、どうして助かったのかもわからない……。次に覚えているのは、樹海に一人でいて、もうネフライドには乗れないのが解かったことだよ。だから樹海周辺部で暮らす事にしたのさ。もう鳥使いの村には帰れないから。ところが樹海周辺部には、樹海の生き物を生け捕ろうとするやつらがいたんだ」
樹海に住むようになった理由を話し終えると、ジェイドは言葉に詰まって再び黙ってしまう。もうこれ以上、ジェイドに色々と聞くのは無理だろう。カーネリアが質問するのを止めると、今度はモリオンがジェイドに話しかける。
「わかった、ジェイド。これ以上何も聞かない。あなたが樹海を守ろうとしているのが解っただけで、本当によかった。それより私、鳥使いになったのよ」
モリオンはジェイドに優しく話しかけたが、ジェイドの答えは以外なものだった。
「君が鳥使いになったのは、もう知っているよ。樹海でベヌゥに乗る君をよく見かけたからね」
なんと、ジェイトは鳥使いになったモリオンとジェダイドを見ていたのだ。
「君もう立派な新入りの鳥使いだよ。鳥使いの道を歩むには、沢山困難があるだろうけれど、君なら乗り越えられる……きっとね」
ジェイドは、ニジノオ鳥の雛を抱きしめたままモリオンに語り掛け、途中からモリオンに近寄ると、雛を右手に抱き抱え直してから、左手をモリオンの左肩に置き、モリオンを見詰める。
「君が一人前の鳥使いになるのを、楽しみしているよ。じぁ、さよなら」
ジェイドは別れの挨拶をしてモリオンから離れると、ニジノオ鳥の雛と共に森へと走っていく。
「待って、ジェイド。お願い、村に……深緑に帰って」
姿を消そうとするジェイドをカーネリアが呼び止め、ジェイドは一瞬立ち止まりって、カーネリアにせを向けたままカーネリアの呼びかけに答えた。
「ごめんよ、カーネリア。村にはもう戻れないよ。ベヌゥの近くには、いたくないんだ。さよなら」
この言葉を最後にジェイドは森へ突き進み、姿を消していく。その様子をカーネリアは、涙が溢れる目で見守った。ジェイドは身体の傷よりも重い心の傷が治るまで、鳥使いの村には戻らないだろう。今カーネリアがしてあげられるのは、樹海に消えるジェイドを見守る事だけ。そう思うと、涙がいくらでも溢れて来る。でも、泣いてばかりもいられない。
「さあ、もう行きましょう」
カーネリアはモリオンを促すと騎乗具を手にし、ブルージョンに近付いていく。
鳥使い達が去った後で、男はゆっくりと頭を上げた。
「やれやれ、なんと言うやつだ。何も知らないで……」
呟きながら起き上がった男は立ち上がると後、周囲を見回し、母語で呟いたのを誰かに聞かれてなかったかを確かめる。彼らの知らない言葉を使うのを、絶対に地元民に知られてはならない。自分達の存在は、この世界では秘密なのだ。
「まったく……因果な仕事だよ。惑星探査員という仕事は……」
その男、惑星探査員ロウリー・ジマーは苦々しげに一人呟く。自分達の存在を知られても良いとされる時まで惑星探査員は、この世界では正体を隠すことを求められる。正体を隠してこの世界の調査をし、それと同時にこの世界への不法侵入を阻止しなければならないのだ。なにしろこの世界は、宇宙船で遭難した人々の子孫であろう人類か、独特の社会を営んでいる世界だ。そのためにこの世界は、特別な保護下にある。惑星探査員ロウリー・ジマーは、この世界を保護する為に、此処にいるのだ。
「それなのに、こいつらの仲間と間違えるとはなぁ」
ロウリーは丈の低い草の上を歩いていて、倒れている不法侵入者に近付く。ここ数日間、ロウリーが追っていた不法侵入者だ。今は哀れにも、大きな鳥に乗っていた男に打ちのめされている。この世界の生物や資源を目的に、不法侵入してきたやからだ。こいつのおかげでロウリーまでも不法侵入者の仲間と間違われ、あの鳥使いの男にぶん殴られてしまった。別の不法侵入者が起こしたひどい事故からたった一人、助け出して治療したというのに。あの男を治療した後、秘密保護の為にロウリー達の記憶を抜いておいたのだから、助けたことなど忘れているのだろうが。それにいくら殴られても身体の殆どを人工物に代えてしまった身では、気絶することは無い。怪しまれないように、気絶した振りをしていたのだ。
「こんな服装で地元民の前に現れるなんて、無用心にも程がある。おまけに、動物の生け捕り武器を地元民に渡すとは……。一度自分達で巨大な鳥の卵を盗み損なってから、この惑星の人間を自分達の悪さに加担させようとしたのだろう。もってのほかだ」
ぶつぶつ言いながらロウリーは、ズボンのホケットから拘束具を取り出し、さらに超小型注射器で鎮静剤を注射する。こいつを捕まえる為に町でひそかに活動し、自分が助けた男に殴られるのも我慢したのだ。不法侵入者に注射をし終わると、ロウリーは袖をまくって腕輪型の通信機器で仲間と連絡し、拘束した不法侵入者の情報を送ると仲間が来るのを待った。
フォルサの町での商売を終え、知識の塔のある中州に帰って来たカーネリアとモリオンは、さっそくモリオンの引っ越しの準備を始めた。初めての商売の旅をやりこなした事で、モリオンが正式に新入り鳥使いとなるのは確実になったのだ。そのためモリオンは今まで使っていた家を掃除し、村にもっていく物をベヌゥの騎乗具に付いている物入れに入れ、鳥塚いの村に行く準備をし始めた。さらに中州に連れて来た庭の家禽のうち雌の一羽を、中州に立ち寄った鳥使い達に頼んで怪我をした動物を運ぶ要領で鳥使いの村まで運んでもらい、雄の一羽は樹海にとイナの村とを行き来する力があると判断したので、樹海に放した。
こんな引っ越し準備の間にも、カーネリアとモリオンは、ジェイドの意識を接触しようと試みた。しかしジェイドの意識が感じられたのは一度だけ、生け捕りにされていたニジノオ鳥の雛の様子や、リエンやマインを始めとする、ニジノオ鳥の生け捕りに関わった人間達が、フォルサの町の役人に捕まった事を伝えて来た時だけだ。よし知らせだ。ただし、奇妙な服を来た男と、ジェイドが最後に打ちのめした商人はどこか姿を消してしまった。よい知らせを伝えながらも、意識の中にすら現れないジェイドにもどかしい思いを抱きながら、カーネリアは引っ越しの準備を進め、、鳥使いの村からやってくる、長老を含めた数人の鳥使い達を待った。
モリオンが新入り鳥使いとして鳥使いの村に入る事はほとんどきまっていたのだが、村になかには、モリオンが鳥使いになるのを快く思っていない人々もいた。そんなな人達を最終的に納得させるために、鳥塚いの村から鳥使い達が知識の塔にやってきて、モリリオンの鳥使いとしての技量を試すことになっていた。。彼らがモリオンの技量を測り、新入り鳥塚い説いてやっていけるだけの技量があるとと判断すれば、モリオンは誰にも邪魔されずに、鳥使いの村の一員になれるのだ。
やがて鳥使いの村から五人の鳥使いがやって来て、さっそくモリオンの技量を測り始める。モリオンが樹海の木になった果実を採ったり、巨樹の幹を這う小動物の中で群れからはぐれた個体を生け捕り、仲間の群れに還したりするのを見守る鳥使いの中には、嬉しい事にカーネリアの恋人、クロッシュもいた。カーネリアは鳥使い達がモリオンの技量を図り終わり、知識の塔での修行が無事終了したと判断するのを待つ少しの時間を、クロッシユと二人だけの時間にした。
他の鳥使い達が中州に建てられた家の中で休んでいる夜に、カーネリアとクロッシュは中州を取り囲む崖の上に行き、二人だけの時を過ごした。二人が座って寄り添い合っている崖の上は、モリオンとジェダイドが初めて空に飛び出した場所だ。薄暗い夜空には、惑星ビティスだけが姿を現し、鳥使いの恋人たちを見守っている。
「ごめんなさいね。長い間、一人にさせてしまって」
崖の下に広がる、夜の樹海の景色を見ながら、カーネリアはクロッシュに長らく一人にしておいた事を詫びた。
「気にすんなよ。ただしちゃんと一人で待っていた俺を、褒めてくれよな」
「はいはい、あなたは最高の恋人よ。お礼に村へ帰ったらあなたを伴侶にして、嫌になるくらい一緒にいてあげるわ」
カーネリアとクロッシュは久々に心起きなく話し合い、笑い合う。しかし話題がジェイドの話しになると、カーネリアもクロッシユも、顔を曇らせた。
「やはりジェイドは、樹海周辺部をさ迷っていたのか」
クロッシュは悲しそうに言うと、大きくため息をつく。クロッシユにとってもジェイドは、大切な幼馴染なのだ。
「ひどい火傷を負ったうえに、パートナーを亡くした心の傷を背負って、どうやって樹海で生きていくんだろう」
クロッシュが地面に寝ころび、空を見上げながら呟いた時、同じように地面に寝ころんだカーネリアの意識に、ニジノオ鳥の雛を抱いたジェイドの姿が意識に浮かんだ。意識に現れたジェイドは、元気になった雛を自由にすると、ゆっくりと消えていく。
クロッシュも同じ光景を見ていたのだろう。二人同時に驚いて上半身を起こし、お互いを見つめ合った。
「あれは、ジェイドよね」
「あぁ」
二人同時にジェイドの姿が意識に現れたのを確認すると、カーネリアもクロッシュも、暫く黙って空を見上げ、ジェイドが自分の姿と共に伝えて来た事を思い返した。ジェイドは、自分はこれから樹海の中で、樹海の生き物達と共に生き、傷ついたり弱ったりした生き物を治療するのだと伝えていた。樹海の動物を治療することで、自分の身体と心の傷を癒す決意を、ジェイドはしていた。クロッシュとカーネリアは、お互い顔を見合わせながら、ジェイドの決意をしっかりと受け取る。
「さぁ、もう寝ましょう。明日は鳥使いの村へ飛び立つのだから」
意識を身元に戻したカーネリアは、大きな伸びをしながらクロッシユに離しかける。
「そうだね。でもその前に……これは新しい鳥使いを見事に育てた、君へのご褒美だよ」
クロッシユは優しい言葉と共にカーネリアを抱きしめ、そっと口付けをする。
モリオンが新入り鳥使いとしてやっていける技量があると判断されたのは、その次の日の事だった。
光の川の中州から鳥使いの村までの旅は、順調に進んでいった。ベヌゥ達に乗って樹海周辺部を抜け、鳥使いの村がある新緑に入ると、樹海周辺部とは違った景色が広がって来る。新緑の巨樹は、樹海周辺部の木など比べ物にならないくらい大きく、地面は巨樹の枝や巨樹の下を覆っている植物群に隠されて見えなくなり、巨樹の大きな枝や幹には、さまざまな生き物を生息させていた。カーネリア達は時々巨樹の枝にベヌウ達を止まらせると、初めて新緑にやって来たモリオンに、新緑の巨樹やそこに生きる生き物達の話しを詳しく話し、教えていく。
「これからはこの新緑が、貴方の住む場所になるのよ」
カーネリアの話しを、モリオンは目を輝かせて聞く。鳥使いの村は、もうすぐだ。カーネリア達は巨樹の枝からベヌゥ達を飛ばすと、一気に鳥使いの村へと向かっていく。やがて夕日の中に鳥使いの村がある、巨大な切り株のような形をしたが見えて来る。平らな山の頂上に建てられた村人の家々や、新入りや若手の鳥使い達の為の宿舎、山の中腹に作られたベヌゥの離着陸場が鳥使いの村の風景だ。夕日に包まれた鳥使いの村の上空を、沢山の鳥使いを乗せたベヌゥ達が飛び回り、新しい鳥使いとその指導者を歓迎していた 。
---了---