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「すず可愛いなぁ。すずがいると癒される」

最近柴原さんはよくそんな事を口走るようになった。もう柴原さんは立派なパパだ。あの冷徹非情な柴原さんはどこへ行ったんだと思うほど、すずのことをよく構っている。すずも、柴原さんをちゃんとパパだと認識しているようだ。

そうなると、私の存在って何だろうと思う。

この家は柴原さんのもので、すずも柴原さんの娘だ。
そして柴原さんはお姉ちゃんの旦那さん。
私はただの居候。

いつまでもここにいたらよくないんじゃない?
こんな関係、すずにとってもよくないでしょう?

そう思うようになってきた。

柴原さんがすずを可愛がるたび、私の胸はチクリと痛む。

どうしてだろう?

父親が娘を可愛がることはいいことなのに。
いい関係が築けてきているというのに。

それなのに私はなぜ傷付いているんだろうか。
自分の感情がよくわからない。
ぐちゃぐちゃモヤモヤとした気持ちが渦巻くのだ。