ダッシュでお風呂場まで逃げ、ピシャリと洗面ルームの扉を閉める。
動揺する胸を両手で押さえて必死に落ち着けながら、私はおずおずと扉の隙間から顔だけ出した。

「……み、見た?」

恐る恐る聞いてみると、柴原さんはそっぽを向いたまま咳払いをした。

「……見てないよ」

いや、それ、絶対見たよね!
その反応は見たよね!

とたんに顔がカアアと赤くなる。
お風呂から出たばかりなのに変な汗が出てきた。
くそう、嫁入り前なのにっ!

「す、すすすすずの着替えさせてっ」

パジャマとおむつをリビングへ投げ入れ、私は洗面ルームの扉を再びピシャンと閉めた。

はーもう、心臓に悪い。
何もこんなタイミングで帰って来なくてもいいじゃないか。
いつもはもっと遅く帰ってくるから油断していた。

私はガックリと肩を落とす。

裸……見られたかもしれない。
…………橋本美咲、一生の不覚なり。