私の黙りに気をつかってか、柴原さんが補足する。

「もちろんプライベートなことは踏み込まない。あくまでもすずのため。すずが一番いい環境で過ごせるのがベストだと思うんだ」

「それは、……そうですね」

確かにそう。
すずが一番いい環境で。
それが一番だ。

「それに、俺はちゃんとすずの父親になりたいと思う」

柴原さんは未だモグモグと食に走っているすずに視線を送ると、優しく微笑んだ。
その顔は冷徹非情の社長じゃなくて、もう立派なパパの顔になっていた。

たった二日間で柴原さんの心を動かしてしまうすずはすごいよ。改めて子供の偉大さを感じる。

だから私も覚悟を決めた。

「……私たち上手くいくかな?」

「……上手くやるしかないだろう?」

迷っている時間はあまりない。
”すずのため”という魔法の言葉に、すべてを受け入れるしかないのだ。

こうして私たちは、”すずのため”に一緒に住むことを決めたのだった。