いろいろ話をしてみると、すずの通う保育園と柴原さんの住むマンションは意外なほど近かった。
そんなわけで、私が入院中は柴原さんがすずを保育園に送ってくれるという提案を受けた。あの冷徹非情な印象の柴原さんからのまさかの協力体制に、私はまったく頭がついていかない。けれどこれはとんでもなくありがたい話でこれ以外に方法は思いつかず、遠慮なくお願いすることにした。

「大丈夫ですか?」

「……大丈夫もなにも、やるしかないと思ってるよ」

腹をくくったのだろうか、柴原さんは真剣な顔つきで頷く。

すずが嫌がって大泣きするのではないかとハラハラしたが、お昼寝から起きたすずはあっさりと柴原さんと打ち解けてしまいこちらは拍子抜けだ。すずは何だかよくわからないことでゲラゲラと笑っている。無邪気なやつめ。

柴原さんはすずにはほとんど会ったことはないと言っていた。だけどやはり親子の絆というのだろうか、二人は波長が合った。それに、お姉ちゃんが頻繁にすずの写真を柴原さんに送っていたらしく、柴原さんも大きな抵抗なくすずを受け入れてくれたようだ。

よかったはずなのになぜだかちょっぴり疎外感を感じてしまい、私はそれを振り払うかのように頭をブンブンと振った。
それを見ていたすずが、真似をして頭をブンブンと振って大笑いをする。

何が笑えるのかさっぱりわからない。
二歳児は意味不明だ。