「俺も有紗に連絡はつかなかった。 君はあれからどう?」

「私も姉とは音信不通です。それから母はもう他界していて、父は疎遠なんです。だから頼る人がいなくて。だから、あの、……来てくださってありがとうございました」

「うん、驚いたけど」

「ですよね」

私たちはどちらからともなく苦笑した。
本当に、まさかこんな形でまた柴原さんに会うとは思いもしなかった。

「この点滴終わったら帰っていいんです?」

私は左腕から伸びている大きな点滴袋を指差す。あと少しで無くなりそうだ。

「いや、最低二日は入院だよ」

「え?ええっ?ええー!!!」

に、入院?!
ど、どうしたらいいんだろう。
私が入院なんてしたらすずはどうなってしまうのか。だれが面倒を見るんだ。大人しく一緒に病院にいるなんてことはできるのだろうか。

「そのことなんだけど、少し、これからの話をしようか」

焦って目が回りそうになっている私に対して、柴原さんはずいぶん落ち着いた態度で私を見る。
さすが社長なだけあってこんな緊急事態でも慌てたりしないんだなと、どうでもいいことが頭を過っていった。