「うん、それでね。私は愛に生きることに決めたの」

「はああ?」

「離婚して好きな人と結婚します!」

にっこりとそう宣言する姉に、私は呆れを通り越してポカーンとしてしまった。
突然何を言い出すのかこのバカ姉は。
冷たい目をした私に、バカ姉はさらにバカなことを言い放った。

「だからさ、”すず”は美咲にあげる。いい感じに懐いてるし、美咲は結婚できない喪女だからちょうどいいでしょ」

「ちょっと何言ってるの?ふざけないでよ」

「なんなら旦那もあんたにあげるわ。私ったら超優しいー」

私の意見などまったく聞く耳持たない。
姉の頭の中はお花畑なのだろうか。

そもそも姉の言っていることは嘘だらけだ。
父親とは仲はよくないけれど捨てられたわけではないし、母は病気で亡くなっただけだ。だからといってお金に苦労したこともない。私も姉も習い事をしていたし、割りと何でも買ってもらえたように思う。

そして最大の疑問。
”旦那をあげる”とは?
姉は結婚はしているが旦那さんとは別居をしていると以前自分で言っていた。

私は姉に手を繋がれて大人しく立っている姪っ子、“すず”に視線をやる。
すずは屈託のない純粋な笑顔で私を見た。
そしていつも通り、

「ねえね」

と私を呼んだ。