「悪いけど、今から来客予定があるんだ。君の言う責任ということならきちんと取っている。まだ何かあるなら、今度はちゃんとアポイントを取ってから来てくれるかな」

あくまでも今日は“親切にも会ってやった”という雰囲気がひしひしと伝わってくる。
柴原さんは胸ポケットから名刺を取り出すと、乱暴に差し出して私をソファから立たせた。そして扉へと促す。

早く帰れと言わんばかりの態度に、私はぶちギレて柴原さんをキッと睨んだ。

「姉といいあなたといい、ふざけたやつしかいないのかよ。社長っていう肩書きは立派かもしれないけど、父親としてはクズだわ。ゴミ以下。死ね」

私の暴言に柴原さんは顔色ひとつ変えずに扉を開けると、丁寧な所作で私を追い出した。

「気を付けてお帰りください」

他人行儀なその態度に腸が煮えくり返りそうだ。
廊下では秘書の安達さんが待ち構えていて、私をエレベーター前までエスコートした。
にこやかに一礼されるも、こちらからは挨拶などする気はまったくない。

私は先ほど渡された名刺をぐしゃりと潰して、そのままカバンに放り込んだ。

ああ、ムカムカする。