「母親がいなくなってすずはひとりぼっちです。父親として何とも思わないんですか?あなたにもすずを育てる責任があるんですよ」

「責任なら養育費という形で取っている。今まで延滞したこともないし、有紗から文句を言われたこともない。そもそも産みたいと願ったのは有紗だし、そのことについても結婚という形で責任を取った。この関係は有紗も了承していることだ。だから君にとやかく言われる筋合いはないよ」

柴原さんは飄々と終始余裕な表情をしていて、それがまた腹立たしく思える。

なぜ私が、いや、なぜすずがこんな目に合わなくてはいけないのだろう。
生まれてきてまだ二年。パパとママの愛情をたっぷりと受けたい年頃だというのに。

すずを捨てた母とすずを見捨てる父。
こんなことあっていいハズがない。

「今、私が面倒を見ているんですけど、おかしいですよね?」

「かといって、ほとんど会ったこともない子を俺に押し付けられても困るな」

柴原さんは面倒くさそうに大きなため息をついた。
自分の子のハズなのに、なぜこんなに冷たくなれるのだろう。この人には心というものがないのだろうか。