「赤ちゃーん、お姉ちゃんだよー」

すっかりとお姉さんらしくなったすずは私のお腹に呼び掛ける。それに反応するかのように、赤ちゃんはポコンポコンと元気よく蹴った。

「楽しみだな~」

赤ちゃんが生まれてくるのを心待ちにしてくれているすずは、すっかりお姉さんの顔だ。それがとても頼もしく嬉しい。

「パパにも触らせて。赤ちゃん~、パパだよ~」

圭佑さんが私のお腹に手を当てながら猫なで声で呼び掛ける。

ピタッと止まる胎動。
流れる時間。

「…………動かないね?」

「うん、動かない」

「パパ全然ダメだね」

すずの冷たい一言に、圭佑さんはガックリと肩を落とす。というのも、圭佑さんだけまだ胎動を感じていないのだ。
タイミングが悪いのか本当に赤ちゃんが避けているのか、赤ちゃんはまったく反応してくれない。

「くっそー、生まれてきたらめちゃくちゃ可愛がってやるからな!」

捨て台詞を吐きながらもどこか楽しそうな圭佑さんは、ますますパパの顔つきになった。