花束を持って墓園に行くと、すずはとたんに張り切りだした。

「すずがおみずやるからね。すずがもつの」

柄杓を得意気に振り回し、やる気満々だ。
花を活けようとすると、

「あ~!すずがやるっ!」

蝋燭を立てようとすると、

「すずがやるのー!」

遮るものならば泣きわめくので、なかなか前に進まない。
この年頃は何でも自分でやりたがると、すずの担任の保育士さんが言っていた。それも立派な成長なんだそう。

「おみず!おみずやる!すずがやる!」

すずは柄杓を持って水を上手にすくうと、墓石めがけてバシャンと水を撒いた。

消える蝋燭。
濡れる服。

「あーーー」

私と圭佑さんは頭を抱えるが、すずだけはゲラゲラと笑っていた。

「ぬれたー!キャー!あはは!もっかいやっていい?もっかいやっていい?」

「すず、ストーップ!」

天気が良く爽やかな風が吹く墓園に、すずの明るい声と私の怒号が響き渡る。そんな中、圭佑さんはクスクスと笑いながら一人冷静に蝋燭の火を点け直している。

きっとこれからも、私たちはこんな調子なんだろうなと漠然とそう感じた。