「あら、何の用かしら」
まどかの家に行くと、立っていたのは仏頂面で、問いかけてくる女性。
この人こそが、まどかの母親。
透き通るような白い肌なのは、まどかと同じだ。
つり目。茶色くて、天然パーマの髪。
まどかと似ていると思えない。
そして、この表情。
娘に向けるような表情とも思えない。
「……お母さん」
まどかは今、この女性をそう呼んだ。
やはり、この人は、まどかの母親だ。
「あなたは?」
表情を変えないまま、俺にそう問いかけてくるまどかの母親。
大体、察しはついているんだろう。
俺が、まどかと交際していること。
相変わらず、にこりとも笑わない。
まどかの隣にいることを見ただけで、いい印象を抱かないのか。
まあ、そうだろうな。
なにせ、この人は本来は愛するべきだった娘を愛せなかったんだから。
愛せない人間の恋人に対しても、最初から愛せる人なんぞいねぇだろうな。
「まどかさんと、お付き合いしている久遠と申します」
俺がそう言うと彼女の母親は口元を笑みの形にして、ふは、と息をもらした。