「一緒に家を出て、2人で知らない場所に行こう」



愛も奪われず、熱い涙を流さなくていいところへ逃げるために、俺が思いついた方法だ。



「えっ……?」



ガラス玉のような瞳は、一瞬だけ小さな光をともした。


このままだと、お前はダメになるぞ。
これ以上、愛を奪われちまったら……。


まどかの心は、正常に機能しなくなる。
きっと、心を殺すことになるだろう。



「久遠は、それでいいの?」



まどかの質問に、首を横に振る。



「俺は、それでいいから言ってるんじゃない。それがいいから、言ってるんだ」



そう、それでいいんじゃない。
そうしないとダメだからだ。


それがいいから。