「あんたなんか、育てなきゃ良かった」



彼女は自分の母親から、何度もそう言われた。


はじめて、そう聞かされた時のことはどんなことがあってもこれから生涯忘れることはないだろう。


瞳の中にきらめきのない、ガラス玉のような目で。
そう言ってきた。



「わたしね、お母さんに愛されたことないんだ」



きらめきのない目。


俺は確信した。



「わたしのお母さん、わたしのこと育てなきゃよかったって言うの。わたしは、邪魔な存在なの」



きらめきのない目は、愛をもらえていない証拠だ。


心がかわいている。



「邪魔だと思ってない!」



俺は、強い口調で言った。



「いいの、気にしてないから」



愛されないことが、まどかの中では当たり前になっていることがわかる言葉だった。


信用もなくなっている。
愛がないから、信用もない。


自分で自分に対する愛もない。