俺とまどかで、遠い地へ行き同棲をすることにした。


携帯も解約し、まどかは完全に母親と縁を切ることができている。



「久遠……本当にありがとう」



俺と向かい合って椅子に座り、まどかは俺の手を力のない自分の手で握った。


その言葉を聞いて、その表情を見て、
俺は一つ、まどかに頼みごとがあることに気がついた。



「もう、愛されないことを当たり前に思うなよ。俺から、ひとつ。これを当たり前にしてほしいことがあるんだよ」



「当たり前にしてほしいこと……?」



「俺に愛されることを、当たり前に思ってほしい」



これは、まどかの乾いた心を満たしたいというのもあるけれど、本音だった。
俺がまどかを、もう愛さないわけがないから。



「久遠……!」



また、まどかの瞳はぬれていった。
それ以上瞳がぬれる前に、俺は歯がほんの少しだけ見えている、まどかの口元に自分の唇をくっつけた。



「俺にこういうことをされて、当たり前だと思ってほしい……」



唇を離した時には、案の定さっきよりもまどかの瞳はぬれていて。


一筋、熱い涙が流れた。