いつも口うるさくて頑固で気難しくて。

でも、俺が今よりもっと小さかった頃、誰よりも可愛がってくれたのは、あのじいちゃんだったんだ。

「他人の家族のために泣けるなんて、やっぱりいい人だと思うよ」

「……そうかもな」

少年の言葉に父親も静かに頷いた。

「ねぇ、俺さ。もう少しじいちゃんを……」

「ねぇ!お祖父ちゃん、目を覚ましたよ!!」

少年が何か言い終える前に、離れから小学生の妹の声がした。

「行くぞ」

父親は少年の肩を抱くようにして離れへ駆け出した。

少年は駆け出す前にもう一度、月を見上げた。