「え?あの、おっしゃってる意味がよくわからな……」

「麒麟に成りたかったんですよ、お祖父さまは……」

久慈の眼鏡の奥の黒い瞳は怪訝な顔の父親にも、変わらず微笑んでいた。

「家族にうるさく干渉されることなく、自由に伸び伸びと残りの人生を駆け回りたい。

麒麟のように尊敬され大切にされ、そして強く愛されたい。

その願望の具体的な姿が、あの《野獣》

怒りと哀しみで本当の麒麟になれない“麒麟崩れ”だったんです」

「ですが、目の錯覚だけであんな姿に見えるワケないし、お祖父ちゃんの眼は確かに炎のように光るのを私はすぐ傍で見たんですよ!!」