「何してるんだ?もう家に入るぞ」

「あ?うん……」

滴草と久慈が話をしていた、その頃。

滴草に腰を抜かしていた少年が、庭で月を見上げていた。

「じいちゃんさ、毛は生えてなかったね……」

「ああ?うん」

少年の問いに今度は父親が曖昧に答えた。

「じいちゃんは最初からハゲてなかっただろ」

「その意味じゃない!父さんだってわかってるだろ!?」

祖父の身体に麒麟の体毛は生えていなかった──

セブン屋たちと闘っていた時には確かに祖父は四ツ脚の《野獣》だった。

ふさふさの尻尾に黒い剛毛の生えた獣に見えた。

雨戸の隙間から見ていたから間違いない。