「終わりましたね」

【代理】は片膝を着き、人差し指と中指の2本で《野獣》の頸動脈に触れると言った。

「ええ……。後片付けを除いては……」

【店長】はそう答えると、自分の背後を振り返る。

《野獣》を倒したことが合図だったかのように隠れていた月が雲間から顔を出す。

闇が晴れ、今は静まり返った日本庭園に若い男女の姿がハッキリと浮かび上がる。

【代理】は地面に片膝を着いたまま、頭上の三日月を見上げる。

黒髪が夜風になびき、眼鏡の奥の切れ長の瞳が冴え渡る空を見つめる。

その瞳はどこかホッとしたように優しげに微笑んでいた。