「私に質屋なんか向かないんですよ、本当は……。あ~あ、お店辞めたいなぁ」

滴草は“麒麟崩れ”と戦った時の凛々しさと機敏さはどこへやら、今は小さな子供がぐずるように久慈に不満を並べる。

「当店の歴史は古いですからね。鎌倉時代からでしたか?」

久慈はそんな滴草に馴れているのか別段気にする風でもなく、別の話をしてみる。

「ええ、我が家に古くから伝わる文献では……。

口伝だけなら平安時代の吉夢や凶夢の買い取りまで遡るらしいですが、どこまで本当かはわかりません」

滴草は拗ねたように投げやりに答えた。