「うん……」

滴草は子供のようにコックリと頷いた。

「店に戻ったら手を冷やしましょう。もう少し辛抱してください」

久慈は正面を見つめたまま、しかし気遣いの滲んだ声で滴草を励ます。

その声を聞くと滴草は安心したように微笑んだ。

「大丈夫ですよ、心配しないで。景徳鎮に素手で触れたり“麒麟崩れ”に触った訳ではないのでこのくらい平気平気!」

“ただ、久慈さんに心配してもらえるとそれだけで嬉しいんです”

滴草はそう言いたいのを我慢して、ズキズキと痛む両手を庇うようにして、膝の上に乗せた木箱入りの景徳鎮を眺める。