だが、この家の財産の大半は今だにこの祖父の名義となっている。

もとより、旧家の出身でもない、よそ者の嫁などにつべこべ言われる筋合いはない。

祖父は自分を疎略に扱う家族への当て付けもあって、さらに高価な骨董品を買い集めることとなった。

そんな時、出入りの骨董品屋の主人に薦められたのが景徳鎮だった。

景徳鎮(けいとくちん)とは中国の代表的な陶磁器のことである。

もともとは中国の江西省東北部の地名であったが、この地方で生産される良質な陶磁器にこの名が付けられるようになった。

この家の祖父が手に入れたのはその景徳鎮の中でもとりわけ美しい青花(せいか)であった。