名家の隠居として家族から尊敬される立場にありながら、実際は息子夫婦に母屋を取られ、離れにひとりぼっちで住まわされていた。

女の子2人、男の子2人の孫たちも滅多に離れに近づかない。

寂しさを紛らわすように祖父が骨董品集めにのめり込み始めたのは、ちょうどその頃だった。

茶器や壷、水墨画などの比較的オーソドックスな骨董品を、骨董店に足を運んでは買い求めてくる。

骨董品といえば値の張る物も多いから、当然のようにこの家の嫁で息子の妻は、息子を通して引っ切りなしに小言を言って来る。