会場を出で外に出た私に真夏の容赦ない暑さが襲う。
テレビの天気予報のお姉さんは『今日は猛暑日だから熱中症には気を付けてね』と、他人事のように言っていっけ。

私は近くのベンチに座ると、ポケットに丸めて入れていた音楽祭のパンフレットを確認する。

運営予算が余ったのか、パンフレットはオールカラーだ。
豪華に演奏者達の写真も乗っている。

開演時間は午前十時からで開演時間は午後の五時。
小学生の習い事や中学生から大学生の音楽関連の部活。

他に有志での発表があると、確かに時間はかなり掛かりそうだ。

そんな中から私は自分の演奏順番を確認。
どういう理由か分からないが、何故か私は一番最後。

いい迷惑だ。
自分の出番が終わったら早く帰って昨日買った楽譜を弾きたいのに。

最初の演奏は音楽教室に通う幼稚園児の歌。

その次は小学生のバイオリン演奏や、吹奏楽教室に通う生徒の演奏。

『大川音楽教室』と言う教室に通う生徒達のピアノ演奏と言った順で進んでいくみたいだ。

何だか退屈そう。

そんな他人の演奏なんて興味がないと心に思いながら、私は次々にページを捲っていく・・・・。

・・・・・・・。
最初は私の演奏に間に合うように会場に着けば良いと思っていた。

昼過ぎに会場に来たら問題ないと思っていたのに『凄腕のピアニストが来るから聴きに行きましょう!』と、元気な声の春茶先生に無理矢理連れてこられた。

その凄腕のピアニストの演奏もまだまだ先だと言うのに。

どうやら春茶先生は私のピアノの先生として来たの同時に、『純粋に子供たちの音楽が聴きたかったのだろう』と、私は勝手に推測した。

目が見えない春茶先生は音を頼りに生きているからなのか、音楽が大好きなんだろう。

『音が一人一人それぞれ違う音を奏でるなら、それは楽しい演奏になる』と、前に言っていた事があったし。

その楽しさが未だに理解できない私。

理由としてはきっと、自分のことしか考えたことがなかったからなんだろう。

同時に私は音楽なんて、本当は興味がないのだろう。好きな作曲家はいるけど、それ以外の音楽はあまり聞かない。

だからやっぱり『私は音楽に興味がない』という言葉に辿り着くのか今の私だ。

他人の演奏を聞いていたとしても、いつの間にか違うことを考えていて、全く演奏や音楽に集中していないと言う事は多々あるし。

と言うかほぼ毎回。
と言うか私、なんでこんな場所に居るんだろう。
高校三年生の受験シーズンなのに、呑気にピアノを弾いていて良いのだろうか。

進路は何一つ決まってないのに。
プロになりたいわけでもないのに。