「……あれ、これって」
勿論、気にしていたところに奏世は気付いた。当たり前だ。
奏世を追いかけるために、奏世の出ている雑誌をファイリングしたり、奏世の出演している作品のDVDを揃えていたんだから、それ専用の棚がある。結構な量だ。それが奏世の目に留まらない筈がない。
「……奏世を追い抜きたくて」
奏世の情報や演技している姿は全て把握しておきたい。それはライバル視しているから起こした行動だが、今は奏世の彼女。これじゃ、傍から見たらストーカーだ。
「奏世の出ているもの、全部チェックして研究してた。……ごめんね、これじゃストーカーみたいで気持ち悪いよね」
家に呼んだのは私だけど、これだけは怖かった。引かれたらどうしようと、何度も考えた。
今だって、奏世の反応が怖い。隠し通せば良かったのかもしれない。彼女に全部把握されているなんて、きっと気持ち悪がられる。
「すげー。こんな古いのもよく集めたね。俺、家の何処にあるか分かんないや」
「……え?」
「ていうか、さ。それなら俺も同じだよ。栞菜に追いつきたくて、栞菜の出てるもの全部チェックしてたから」
「え、は、初耳だよ!?」
「しかも俺の場合は中学以降は恋愛感情あったから、完全に下心も入ってる。俺の方がよっぽどストーカーじゃん」
私が泣きそうな顔をしていたからかもしれない。奏世はいつものように笑って、私の頭を撫でた。
「俺は全然嫌じゃないよ。環奈が嫌なら俺もやめるけどさ」
「わ、私は嫌じゃない……」
「じゃあ、俺らストーカー同士ってことで」
にかっと歯を見せて笑う奏世が、私の心を軽くさせる。
「まあ、実は前に身長の話をした時から勘付いてた」
「で、ですよね」
「まあ、俺も栞菜の身長知ってたから人のこと言えないなって」
「え、じゃ、じゃあ私の公式プロフィールも全部言えたりするの?」
「室舘プロダクション所属、小鳥遊栞菜。出身地は神奈川県。生年月日は1997年2月23日。血液型はA型、身長は162cm。趣味・特技は読書、映画鑑賞、ピアノ」
「ほ、本当に知ってる……」
「自分で言ってて本当にストーカーみたいだな。でも環奈も言えるでしょ?」
「……SFLエンターテイメント所属、牧丘奏世。出身地は東京都。生年月日は1998年8月17日。血液型はA型、身長は171cm。趣味。特技は空手」
「ははっ、俺ら傍から見たらヤバいカップルだね」
奏世があまりに笑うから、つられて私も笑ってしまう。