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レッスンを全て終え、古坂さんの車でランチしに行く。
その地中海料理のお店は事務所から車で30分ほどのところにあった。
店内は落ち着いた雰囲気で、運ばれてきたブイヤベースはニンニクが良く効いていて美味しい。
「この前は撮影お疲れ様。CM見たけどとっても良かったよ」
「ありがとうございます」
古坂さんはパエリアを美味しそうに口に運んでいる。古坂さんは大食いではないものの食べることが大好きで、よくこうやってお店に連れてきてくれる。しかも、古坂さんのお店選びは外れないのだ。
「……栞菜」
「はい?」
「学校、楽しい?」
あ。そういえば、知っていてくれているのは古坂さんだけだったな。
少し、お腹のあたりがきゅっとなった。
「はい、高校はとっても楽しいですよ」
「そう、なら良かった」
私の過去を知っているのは古坂さんだけだ。
今の私はもう弱くない。ちゃんと自分の足で立っていられるし、小さなことじゃ挫けない。
「中学と違って、何もないですから」
高校には私をいじめる子は一人もいない。
中学はそれこそ酷いもので、今でも思い出したくない過去だ。
いじめの内容が酷い訳じゃない。いじめ自体はくだらないことばかりで、辛かったのは時期だった。奏世が人気子役としてその名を轟かせた後から高校に上がる頃まで、私は今までの人気っぷりからは考えられない程、人気が停滞した。
「栞菜ちゃんは演技がすごくいいけど、微妙な年齢だからね」
それはまるで、もう人気の時みたいに可愛くはないと言われているようだった。お前が成長していく姿には興味ないとでも言われているようだった。
だって実際、人気は減った。
それはつまり、そういうことでしょう?
中々仕事がまわってこない期間、勿論奏世はどんどん人気を博していった。それが辛かった。追いかけたいのに、追いかける術が与えられない。奏世ばかり大きくなって、私には光が当たらない。
そんな時期に、学校でも友達があまり口をきいてくれないと、流石の私も応えた。
小さないじめの理由は妬みだった。