お風呂から上がり自室に戻ると、何故か妹が私のベッドの上で雑誌を読んでいた。
「ねえ、何でいるのよ」
「この雑誌、あたし買い忘れててさ。借りてまーす」
「いつも事後報告だよね」
「……お姉ちゃん、まだ奏世くんの切り抜きファイリングしてたんだ」
「えっ」
妹が私の手元を指差す。
そう、早速さっきの雑誌から牧丘奏世のインタビュー記事を切り抜いてファイリングしようとしていた。
あれから変わらず牧丘奏世を研究している。そこらの奏世ファンよりよっぽど詳しいかもしれない。牧丘奏世の出る番組や雑誌は一つも漏らさずチェックしている。演技そのものに限らず、演技にかける想いまで。ずっと追いかけているのに、中々彼には追いつかない。
「……ずっと追いかけるよ、私は」
丁寧にファイリングする。もうこのファイルは何冊目だろうか。彼の番組を録画したディスクはもう何枚になるだろうか。
彼の背中ばかり眺める自分はもうやめたいのに、彼は年々速度を上げる。
それがやっぱり悔しくて、私は今日も明日も地道に活動を続けるのだ。