おそらくというか確実に、俺は同情されている気がする。
海に身を投げてしまいたいほど思い詰めていることがあるのだから、私がなんとかしなくちゃと。なにか力になれることがあるはずなんて、正義感を抱かれている可能性もある。
それまでに接点はなくてもクラスメイトが死のうと考えていたら、止めたいと思う心理は普通のことだろう。
でも俺からすれば、少しお節介の度が過ぎている。
「なあ、尾崎って茅森と仲よかったっけ?」
そして今日。茅森に釣られるようにして別のクラスメイトからも声をかけられた。
それは茅森同様に明るくクラスのムードメーカーでもある奥野だった。
人と距離を置いている中で、奥野だけは前からよく話しかけてくる。
今の季節とは反対に暑苦しい人で、いつも口を開けば彼女がほしいとうるさく嘆いている。
俺よりも身長や体格がでかくてモテそうな雰囲気はあるのに、女子からすれば「奥野はがちゃがちゃしててうるさい」そうだ。
「なんか最近よく茅森と一緒にいるじゃん」
「……一緒にいないし、別に仲良くもない」
俺は愛想の欠片もなく、ぼそりと答えた。
「なんかすげえ話しかけられてるから茅森ファンのやつらが僻んでたぞ」
「………」
「茅森って人懐っこいからけっこう勘違いさせるタイプだよな。でもそこもまた可愛いんだよな」
興味がない俺は返事をしないで、窓の外に目を向けた。
空にはいかだのようなすじ雲が浮いていた。青々としていたポプラの木は紅葉を終えて、グラウンドに枯れ葉が舞っている。
俺の生きることへの執着は、冬になるにつれて薄くなっていく。雪が降って、どこもかしこも白くなればもっとだろう。