出来上がったとんぼ玉は除冷剤を入れた缶の中で冷却をする。形が崩れないように棒がついたまま置くと、なぜかこめかみ辺りがズキンとした。
『この宝物があれば、私なんでも頑張れる』
痛みとともに頭の中で聞こえてきた声。
誰が言ったのか、宝物とはなんなのか、思いだそうとするたびに頭がひどく疼いた。
「……わあ、悠生くん見て。雪だよ!」
と、その時。茅森が突然声を上げた。視線を向ける頃には痛みも声も消えていた。
――今のはなんだったんだろう。
不思議に思いながらも、茅森と同じように窓を見ると、空から綿毛のような雪が降ってきていた。それは今年の初雪だった。
「積もるかもしれないね」
「大丈夫。これは積もる雪じゃない」
この街に住んでいると雪に感動もないので、積もるかどうかを最初に気にしてしまう。
「見ただけで積らないって分かるの?」
「まあ、大体。っていうか茅森って内地出身?」
「そうだよ。ふふ、内地って久しぶりに聞いた」
茅森のことは四月に同じクラスになって知った。春からの記憶は曖昧だけど、なんとなく彼女が道民ではないことには薄々気づいていた。
同級生たちと話していても小樽弁と言われる方言も使わないし、なにより都会っこという感じで垢抜けている印象があったから。