それからチャイムが鳴り、次の授業のために俺たちは教室に戻った。
俺はいつものように自分の席に座り、茅森はすぐに友達に呼ばれて、その輪に入っていた。最近ならばそれ以降の休み時間でも無条件に机に近寄ってきて一方的に声をかけてくるのに、今日はとても落ち着いていた。
『放課後、また工房に遊びにいってもいい?』
屋上で、彼女のそんな希望を受け入れたからだと思う。
ランプの炎を確認したいからと言われて一回目は渋ったけれど、『炎が消えてたら、私本当に死んじゃうんだよ』と強く迫られたら断れるはずがない。
それも含めて茅森が俺にランプを預けたとしたら……けっこう計算高いというか、侮れないと思う。
「なあ、尾崎。英語の先生がお前のこと呼んでたぞ」
すべての授業が終わって放課後になると、奥野がわざわざ知らせにきてくれた。おそらく英語の授業をサボったことかもしれない。
正直、英語に関してだけは何度もサボりを繰り返しているし、前に行われた小テストも嫌で抜け出した。素直に職員室に行ったところで、長々と説教されることは間違いない。
「けっこう苛立ってたし、ちゃんと行けよ」
「……気が向いたら」
気なんてもう家に帰る方向にしか向いていない。
「あ、そういえば尾崎って俺と同じで帰宅部だよな?」
ふと奥野が思い出したように言った。帰宅部であるはずの奥野はなぜか制服からジャージに着替えていた。
「暇な時、運動部の助っ人要員になれない? 俺もこれからバスケ部に行くんだけど」
たまに奥野がサッカー部のゴールキーパーをしていたり、野球部の練習に混ざっていたりと、色々な部活に顔を出していることは、なんとなく知っていた。
友達が多いから遊びの延長で参加しているんだろうと思っていたけれど、どうやら助っ人で呼ばれていたらしい。