「ランプの炎が消えると死ぬ病気なんて嘘だろ?」

「なんで嘘だと思うの?」

「そんな病気、聞いたこともない」

「そうかな。昔から人の命をロウソクの長さで表したりするし、ランプの炎が消えたら死ぬ病気があっても不思議じゃないと思うけどな」

自分のことなのに、茅森はやけにあっけらかんとしていた。

「でも調べてもなんにも出てこなかったぞ」

ランプを受け取ったあとスマホを使って色々と検索してみた。でも日本での症例などはなく、海外の情報も辿ってみたけれど一切なにもヒットしなかった。

「なんだかんだ言いながら気にしてくれてるんだね」

「勝手にランプを預けてきたのはお前だろ。からかってるなら本当に炎は消すからな」

「ふふ」

茅森は女の子らしく、口元に手を当てながら笑っていた。教室でもつねに笑顔を絶やさない彼女だけれど、こんなにも柔らかく笑う人なんだと少しだけ目を奪われそうになってしまった。

「悠生くんは絶対にランプの炎を消さないよ」

「なんで言い切れるんだよ」

「だって、悠生くんはそういう人だもん」

それはずいぶんと俺のことを知っているような言い方だった。

なんでそんなに自信満々なのかはわからないけれど、距離感が近くて人懐っこい人だから、誰に対してもこんな感じなのだろうと、勝手に解釈した。