本当に消してしまったらどうなるんだろうか。
工房内にある触ってはいけない危険なものより、それはずっと危ないことのように思えた。
「このランプを悠生くんに預けるから炎を守ってほしい」
茅森の強い瞳が崩れて、次に見せてきたのは切なく眉毛を下げている顔だった。
「……ま、守るってどういう意味?」
「特別なことをする必要はないよ。ただ炎が消えないように見守ってくれるだけでいいから」
「そんなこと言われても……」
困るし、責任も負えない。なにがなんなのかちっとも理解できないし、茅森が言っていることを信じきることもできない。
けれど、彼女のしつこさは知っている。俺がなにを言っても簡単には引かないということも。
俺はランプの炎をじっと見つめた。胸の奥がざわっとしたのは気のせいじゃない。
頭の整理がつかないし、預けられる意味すらわからないというのに、なぜだか俺はなにかに導かれるようにしてランプに手を伸ばしていた。
受けとる瞬間に、茅森の手に触れた。小さくて折れそうなほど細い指先は、とても冷たかった。