今日は吹きガラスを作ろうと思い、俺は準備をはじめた。
コンクリート打ちっぱなしの工房内はガラスを溶かすための坩堝があるので季節関係なく暑い。
溶解炉の中の温度は約千三百℃。鉛やヒ素を含まない粒状のガラス原料がつねに燃えていて、一度でも温度が下がってしまうとガラスが固まって坩堝が使えなくなるので、火は一日中炊き続けている。
工房の隅にある大型扇風機のスイッチを入れて、俺は作業ベンチに腰かけた。
軍手をはめて吹きガラスを行うための吹き竿を手に取る。溶解炉からガラスを巻き取ろうと竿を伸ばした瞬間――。
「ねえ、なに作るの?」
気配もなく聞こえてきた声に手を止めた。