幸せになる為に自死を決意した人間はここまで心や行動を解放できてしまうのか、と感じる始まり方。読み進めると、ああこの子は心が解放できたのではなく心が死んでしまったんだなと思う一方、具体的な理由が中々描写されないだけに気になるもどかしさもありました。それは「今日死ぬから」とわざわざ発言するのが引っかかったから。そして後半で明かされる主人公の心の内。生きる事に希望を見出せなくなってしまった主人公は、最期に自分を肯定してほしかったのかと納得しました。正反対のナガトとお互いを受け入れ、彼の秘密(これにはあっと驚かされました、この作品で一番要となる設定でしょう)を知って考えた上で、辿り着いた結末。「最後はやっぱり生きることを選択するのかな」と思っていただけにラストは衝撃だったと同時に、何だかしっくりきました。決して読了後に暗い感情にならないのはこの作品の大きな魅力で、様々なことを考えさせられました。