………ちゃんと切った?


…切ったよ。良かったの、最後にこんな。


うん。だってね、お母さん。天音さん、殻入りのオムレツを間違えたなんて言って自分のと交換してくれるような人なんだよ。
そんな人を私はずっと縛り付けて置くの?私はあの人の未来にとって鎖でしかないのに。

本当は……本当は嫌なところなんてひとつもないの……っ。
天音さんは私のために仕事を休んで遊園地に連れて行ってくれた。上手く卵が割れた時は頭を撫でてくれた。悲しい時は抱き締めてくれた。

私ね、本当はオムレツなんてずっと前から作れるんだよ。だけど少しでもあの人の傍に居たかった。ケチャップ付いてるよ、なんて笑い合えたらそれで良かったの。

天音さんの嫌いなところを挙げてみたって、愛していましたなんて過去形にしてみたって、あの人が私の中から消えてくれない…っ!

ねぇ、どうしたら好きだって言える?あの人の傍に居れる?この足が動くようになる?


楓……


好きだって、愛してるって、あの人を抱きしめたいのに………っ!