「正直に言います。俺は嫉妬しました」
「嫉妬?」
「浩太郎に、もしかしたら俺にしか打ち明けなかった秘密を話すんだと勘違いして、咄嗟に二人を無理矢理引き剥がした。俺、結構期待もしていたし自惚れていたんです。自分が一番雨さんと近い場所にいるって、自分が一番雨さんに頼られているって」
「アキラくん……」
「だけどいつだって自分が伝えるばかりで、雨さんの気持ちを自分で確かめようとしなかった。俺の好意や憧れは、一方的に渡してばかりだった。それでいて余裕のないくらい嫉妬した」
一丁前に嫉妬は出来るのに、いつだって雨さんの気持ちを確かめようとはしなかった。二人の関係性を直接問うたことはなかった。
「俺はこれからも雨さんの言葉を一番近くで聞いていたいし、一番近くにいさせてほしい。一番頼られたいし、一番心を預けてほしい。そして雨さんの本当の気持ちも、ちゃんと聞かせてほしいんです」
「アキラくん、わたし……」
「要約すると、俺は雨さんが大好きです。雨さんの隣を、雨さんの心を俺にください」
今度こそ真っ直ぐ、雨さんの目を捉える。
雨さんはいつも以上に傾聴してくれた、変わらず言葉を受け止めてくれている。
俺が雨さんの言葉を一字一句、漏らさないように聞くのと同じだと。そう思えるくらい、雨さんも真摯に向き合ってくれている。
「私、前言った時以上に、アキラくんなら私の言葉を待ってくれるって、私自身を受け止めてくれるって、思ってる。そして、アキラくんに受け止めてほしいって思うようになった。アキラくんは出会ったころからいつも真っ直ぐだった、気持ちをいつもありのまま伝えてくれた。だから、この人になら心を預けてもいいかなって思うようになったの。アキラくんはいつだって、嘘偽りのことは言わなかった」
「雨さん、それって」
「要約すると、私、アキラくんに心持ってかれちゃいました」
泣き笑いを浮かべる雨さんを、これ以上愛おしいと思ったことはあるだろうか。
やっぱり雨さんは、いつだって言葉選びをきちんとする人だ。言葉を探し悩んで、選んだ言葉を伝えてくれる。
それはきっと、今もだ。
「でもひとつだけ、条件があるの」
「条件?」
「同じものを共有させてください」
それは雨さんらしい、提案だった。
「同じものを見て、感じる。それを、アキラくんとしたい。アキラくんに話したいことは沢山あるし、アキラくんにも色んなところに連れて行ってほしいの。同じものを見て、お互い感じたことを話し合って、同じ思い出を積み重ねていきたいの。それは、私はアキラくんにしか頼めない」
そんな素敵な提案に、俺はこう答えるしかないだろう。
「分かりました。雨さん、俺と哀歓を共にしましょう」