暫くしてからプレートランチが運ばれてきた。
美味しそうなものばかりが、お洒落に盛り付けてある。男の俺でも少しテンションの上がる盛り付け方だ。
雨さんは念願かなって嬉しそうに、携帯に写真をおさめた。体の向きを変え、眺望できる海もパシャリ。
「いただきまーす」
「いただきます!」
木製のスプーンやフォークでいただく。なるほど、見た目負けしない美味しさに舌鼓を打つ。
ちらりと目線だけ上にやると、雨さんが夢中になってフォークを動かしている。無邪気に、かつ嬉しそうに口に運ぶ。食べ方も可愛いんだな。
「この後はどうする?」
雨さんが楽しそうに聞いてくる。楽しんでいる様子は、誘った側としてはすごく嬉しい。
「水族館に行くのもいいかなって思ってるんだけど、どう?」
「ほんと?やったあ、楽しみ!」
友人に感謝だ。女の子と海の方に行くと相談したら、水族館があると教えてくれたのだ。夏休みで家族連れが多いかもしれないが、夏には涼しげでいいのではと、考えてくれたのだ。
「美味しかったな、ごちそうさまでした」
「雨さんのおかげで美味しいものが食べれたよ、ありがとう」
「どういたしまして。名残惜しいし雰囲気をもっと堪能したいけど、水族館が楽しみだからもういこっか」
まって、まって。
そんな可愛い台詞、可愛い笑顔で言われたら落ちない男はいないでしょ。既に惚れてる俺としては、耐え難い可愛さで顔が真っ赤になりそうだ。
無邪気に向けているものだから、尚更罪だよなあ、なんて。
そんな俺の気持ちを知る由もない雨さんは、俺と目線を合わせにこやかに席を立った。
○
ランチの後、予定通り水族館に行った。
やはり家族連れが多く、子供たちの声で溢れていたが、イルカショーやペンギンショーの迫力に雨さんは感動していたようだった。特にクラゲが好きだと言う雨さんのために、クラゲ展示コーナーで時間をたっぷり使った。
「ふわふわ、優雅で幻想的」
そう零す雨さんの横顔も、青がゆらゆらと反射して綺麗だった。
水族館にかれこれ3時間もいた俺たちは、近くのお店でアイスクリームを買って浜辺で休むことにした。
「雨さんは何味がいい?」
「抹茶!抹茶がいいな」
「じゃあ、抹茶とゆずレモンを一つずつ」
俺は無意識だったが、財布からお札を取り出そうとする俺の手を雨さんは慌てて制止した。