「最近奈々ちゃんとどうよ?」

「気安く名前を呼ぶんじゃねーよ。」

智也には一度奈々を紹介したことがある。
祐吾が奈々にベタぼれなのを見透かして、「あの祐吾がねぇ」と目を丸くしていた。

「結婚しないのか?」

「お前、いつも直球だな。」

ズケズケとものを言う智也に、祐吾はふんと悪態をついた。
ビールを一口飲んでから、ぼそりと言う。

「俺、長期海外出張の辞令が出た。」

「マジかよ。」

智也はウーロン茶を噴きそうになる。

「奈々にはまだ言ってない。」

ぶほっ、と今度こそ智也はウーロン茶を噴き出す。

「きったねぇな。」

「ゲホッ…祐吾が…ゲホッ…らしくないこと…ゲホッ…言うから。」

完全に気管支に入ったのか、智也はゲホゲホとむせていた。
ふん、と祐吾はそっぽを向いて言う。

「本当は連れて行きたいんだが…。あいつもうすぐ契約社員の試験を受けるんだ。今猛勉強中でさ、わからないとか言いながら頑張ってる。諦めさせて連れて行ったところで、昼間は一人ぼっちだろう。それを思うと気が引ける。」

だから迷ってるんだ、と物思いに耽ながら言う祐吾に、智也は「へぇ」と目を細めた。