二十七歳で派遣社員。
昨今ではさほど珍しくはない非正規社員という雇用形態だが、奈々はこの会社に勤めて五年になる。
大学を卒業してすぐに派遣登録し、初めての派遣先がこのKURAコーポレーションだ。
倉瀬が奈々の所属する課に配属になってそれほど日は経っていないが、倉瀬から見た奈々の普段の仕事ぶりは、まわりの正社員と何ら変わらないほど業務を持っているし責任感を持ってしっかりとこなしているように見えた。
なので何となく、軽い気持ちで尋ねる。
「何で派遣社員なんだ?」
倉瀬の言葉に、奈々は持っていたグラスをゆっくりとテーブルに置く。
そして眉間にシワを寄せながら倉瀬をじとりと見た。
「…何でって。就活に失敗したからですよ。」
奈々は運ばれてきたデザートのフルーツを摘まみながら、ぶっきらぼうに答えた。
奈々が就職活動をしていた大学三年生の頃、世間では就職氷河期と言われていた。
倍率は0.89。
一人一社もない少ない求人。
大学四年生の後期になっても内定が出ていない者も大勢いた。
だが彼らはどうにかこうにか卒業までに、正社員として内定をもらっていた。
そんな中、残っていたのは奈々だけだった。
昨今ではさほど珍しくはない非正規社員という雇用形態だが、奈々はこの会社に勤めて五年になる。
大学を卒業してすぐに派遣登録し、初めての派遣先がこのKURAコーポレーションだ。
倉瀬が奈々の所属する課に配属になってそれほど日は経っていないが、倉瀬から見た奈々の普段の仕事ぶりは、まわりの正社員と何ら変わらないほど業務を持っているし責任感を持ってしっかりとこなしているように見えた。
なので何となく、軽い気持ちで尋ねる。
「何で派遣社員なんだ?」
倉瀬の言葉に、奈々は持っていたグラスをゆっくりとテーブルに置く。
そして眉間にシワを寄せながら倉瀬をじとりと見た。
「…何でって。就活に失敗したからですよ。」
奈々は運ばれてきたデザートのフルーツを摘まみながら、ぶっきらぼうに答えた。
奈々が就職活動をしていた大学三年生の頃、世間では就職氷河期と言われていた。
倍率は0.89。
一人一社もない少ない求人。
大学四年生の後期になっても内定が出ていない者も大勢いた。
だが彼らはどうにかこうにか卒業までに、正社員として内定をもらっていた。
そんな中、残っていたのは奈々だけだった。