「奈々。お前、俺のこと誤解しているだろう?」

「誤解?」

祐吾の言葉にきょとんと首を傾げる奈々に、言い聞かせるように言う。

「どうせお前のことだから、俺が金持ちで庶民とは住む世界が違うとか思ってるだろう。」

「…そこまでは思ってないけど、多少思ってマス。」

ゴニョゴニョと小さい声になっていく奈々に、祐吾は「バカだな」と吐き捨てた。

「俺はただの会社員だ。金持ちなのは俺の親父だ。息子の俺はその恩恵を受けているに過ぎない。マンションも、家を出ると行った俺に過保護な両親が買い与えたものだ。若い頃に遊び歩いた金は全て親の金だ。外食ばかりなのは料理がまったくできないからだし、カード払いなのはただ単に便利だからだ。」

黙って聞いている奈々の顔は、頷きはするものの、まだ納得がいっていないようだった。
そんな奈々の頭を、祐吾はくしゃくしゃっと撫でる。

「お前はもっと自分に自信を持て。この環境がお前を育てた。それを俺が好きになった。それだけのこと。何か文句あるか?」

文句なんてあるわけがない。

奈々はふるふると首を振って否定する。