改札を抜けると、奈々が手を振って待っていた。
そして開口一番、

「祐吾さん、ごめんなさい!」

と頭をこれでもかと下げて謝ってくる。
祐吾は何事かと身構えた。

「あの…。うちの父が、祐吾さんを連れて来いって…。」

泣き出しそうな顔で祐吾を見上げるので、祐吾はとりあえず頭をくしゃくしゃっと撫でてやった。

よくよく聞いてみると、出かける直前に父親に”彼とお祭りに行く”と伝えたところ、その”彼”を家に呼べと言ってきたそうだ。
そんな急な話は迷惑だと断ったが、父親は頑として譲らず、奈々は逃げるように家を飛び出してきたと言うことだった。

話を聞きながら、奈々の頑固さは父親譲りなんだな、と祐吾は妙に納得した。

「別に俺は構わない。この際だからきちんと挨拶すべきだな。」

「…祐吾さん。」

特段緊張することもない。
いつかは挨拶をしなければいけないところ、今日になっただけのことだ。
ただし、急すぎて普段着だし手土産も持っていないが。

「そんなの全然いいです。ありがとう。」

奈々は恐縮しながら少し涙目になって言った。
祐吾はまた、奈々の頭をくしゃくしゃっと撫でた。