二人の沈黙を破るかのように、祐吾は大きな溜め息をついた。
奈々はぎゅっと身を引き締める。
次は何を言われるのか、はたまた呆れられてしまったのか、固く握りしめた手は気を抜くと震えてしまいそうだった。

そんな奈々をチラリと見ると、祐吾はふいと目をそらす。

「お前、案外おっちょこちょいだし、頑固だし、小動物みたいにちょこまか動くし、雑用も力仕事もするし、まわりのおっさんたちにも凄みを利かすし、危なっかしいんだよ。」

祐吾は不機嫌そうに言う。

「そのくせ誰とでも仲良くなるし、すぐ笑顔を振り撒くし、可愛いし、ほっとけないし、俺の目の届く範囲にいやがれ。何が俺に見合う彼女になりたいだ。バーカ。」

祐吾は口悪く言ったつもりだったが、

「私、褒められた?」

と奈々は意外にもポジティブに受け止めていた。

何だかとても嬉しいことを言われた気がする。

嬉しい気持ちが勝って頬は自然と緩んでしまうが、心は少し複雑だった。