年度末、人事異動が発表された。
祐吾は昇格して別の部署へ異動になる。
異動といっても同じビル内にはいるわけで、全然大丈夫だと思った。

四月、いつもの席に祐吾がいない。
ただそれだけのことなのに、奈々は寂しい気持ちでいっぱいになった。

公私混同はしない。
それは当然のこと。
だけどやっぱり、あの席に座っててほしかったな。
声が聞きたかったな。
なんて思ってしまう。

いつも通り仕事をこなしていつも通り帰宅する。
同じ会社にいるのに、今日もまったく会えなかった。
きっと祐吾のことだ、毎日遅くまで仕事をしているのだろう。
それがわかっているから、奈々は電話もメールもあまりしないようにしていた。

祐吾の邪魔になってはいけない。
頑張っている祐吾の邪魔をしたくない。
週末になれば会えるのだから、大丈夫。
そう自分に言い聞かせて、奈々も仕事に励んだ。

そんな折、すれ違い様に聞こえてきてしまった。

「さっきの人、たぶん倉瀬さんの彼女だよ。」

「えー、あの人って確か派遣だよね?ガチで玉の輿?勝ち組じゃん!」

「どうやって落としたんだろ?羨ましい~!」

付き合っていることを誰かに話したことはないし、当然祐吾の性格からしても誰かに言うことはないだろう。
二人でいるところを、どこかで見られたのだろうか。
まあ別に、いい大人なので隠すことではないし、かといって公表することでもない。

それよりも。

”派遣だよね”と言われたことの方が奈々の心に深く突き刺さった。