「あんなに立派な冷蔵庫があるのに全然食材入ってないし、置いてある食器も少ないしバラバラだし。どうやって生活してるんですか。」

「はあ?一人暮らしなんてそんなもんだろ。だいたい自炊なんて滅多にしないからな。客だって呼ぶつもりはないから、食器もいらないだろ。」

奈々の淹れてくれたコーヒーを飲みながら、ぶっきらぼうに言う。
何故か目の前の奈々はニコニコ顔になっていた。
祐吾と目が合うと、えへへと照れたような笑いをする。

「何だよ?」

その反応の意味がわからず、祐吾は訝しがる。
奈々は頬をピンクに染めながら言った。

「だって。嬉しいんだもん。この家に上がれた私は特別みたい。」

それだけのことで機嫌がよくなるなんて単純すぎるだろう。
だけど目の前の奈々はとんでもなく嬉しそうに笑う。

「この家に上げたのは、俺の両親以外お前だけだ。よく覚えとけ。」

祐吾が念押しで言ってやると、奈々は更に満面の笑みで幸せそうに笑った。
そんな奈々に、祐吾もつられて笑う。

「お前、本当に27歳か?子供っぽいな。」

「むっ。そういえば祐吾さんの年齢聞いてませんでした。」

よく考えたら奈々の年齢は聞いたけれど自分の年齢は告げていなかったことに気づく。
祐吾はコホンとひとつ咳払いをして言った。

「俺はな、奈々と同じ生まれ年だ。ただし、早生まれだから学年はひとつ上な。」

「…同い年。」

「違う。学年はひとつ上だ。それに誕生日は過ぎたから28だ。」

「え~。一緒のようなもんじゃん~。」

祐吾の年齢を聞いて奈々は頬を膨らます。

「祐吾さんは大人びて見える。」

そう言って、さらに膨れた。

そんなたわいもない会話が何ともくすぐったくて幸せで、自然と笑顔になってしまう。